会社などの法人が本店、主たる所在地を移転した場合はその登記が必要です。
ご自身で行う、そのようなご検討をされた方も多いかと思います。
区分
以下の区分に分けて方法が変わります。
- 定款変更を伴わない本店移転
- 定款変更を伴う本店移転
- 管轄区域外への本店移転
会社の例にならってそれぞれ検討しましょう。
定款変更を伴わない本店移転
会社にはそのルールブックたる「定款」が存在します。
定款には本店所在地の規定が必ず記載されており、その範囲外への移転か範囲内の移転かで必要書類が変わります。
例えば、
「当会社は、本店を名古屋市に置く。」とし、
名古屋市天白区から名古屋市中区に移転しても定款の所在地範囲内となります。
しかし、
「当会社は、本店を名古屋市天白区〇〇町〇〇番地に置く。」とされていた場合、
同じ町内でも異なる番地に移転すると定款の所在地範囲外とされ、定款変更を要します。
定款変更を要しない本店移転は、取締役の決定書(取締役会設置会社は取締役会議事録)を作成し、法務局に提出します。
登録免許税として3万円の納付が必要となります。
以下、定款の例です。

定款変更を伴う本店移転
定款の範囲外の本店移転は、取締役の決定書(取締役会設置会社は取締役会議事録)で足りません。
定款変更を要するため、定款を変更した内容の株主総会議事録を作成する必要があります。
例えば、
「当会社は、本店を名古屋市に置く。」とし、
移転先が愛知県春日井市であった場合は、
「当会社は、本店を愛知県春日井市に置く。」などと変更し、その上で取締役の決定書(取締役会設置会社は取締役会議事録)を作成する(株主総会議事録で一括で行うケースもある)こととなります。
なお、定款変更で「当会社は、本店を愛知県に置く。」「当会社は、本店を日本国に置く。」のような広域設定はできません。定款では少なくとも「最小行政区画」までを設定しなくてはならず、「名古屋市」や「愛知郡東郷町」のような単位までを設定します。
なお、東京都は特別区(東京都港区など)を最小行政区画とし、「当会社は、本店を東京都に置く。」という設定はできません。
町田市などは通常の市と同様に設定可能です。
※政令指定都市の「区」と東京都の「区」は性質を異にし、前者は行政区、後者は特別区と呼びます。双方はその独立性で差があります。
管轄区域外への本店移転
会社の、法人の登記はその申請の管轄があります。
例えば、愛知県で言えば名古屋法務局本局管轄と岡崎支局管轄に分かれており、名古屋市は本局管轄、豊田市は岡崎支局管轄となります。
また、他県への移転も当然に管轄外移転となります。
この場合、「移転前の管轄」と「移転後の管轄」の両方に申請書を提出する必要があり、それぞれに登録免許税3万円が課税され、合計6万円の納付が必要です。
具体的には、「旧本店所在地の法務局に提出」「新本店所在地の法務局に旧本店所在地の法務局を経由して提出」の2つに分かれます。
株主総会議事録や取締役決定書などの書類提出を要するのは前者であり、経由して行う新本店所在地宛ての書類としてはそれらは不要です(司法書士に依頼する場合の「委任状」は双方に必要です。)。
管轄外の移転は当然に定款変更を伴うので、提出書類の種類には注意しましょう。
書式
書式例は法務局のウェブサイトにたくさん掲載されているので、ご自身で申請にチャレンジするのも手段のひとつです。
しかし、補正や書類の作り直しの発生も予想されるので、忙しい事業の最中でその手続をご自身で行うメリットについては検討した方が良いでしょう。