今回は相続登記に必要な書類は何なの、というテーマでいきます。これをいかにそろえるかが相続登記のほとんどと言っていいでしょう。

相続登記の必要書類

  1. 相続関係を証明する戸籍、除籍、改正原戸籍
  2. 相続関係説明図(戸籍等を後に返してもらう場合)
  3. この登記で名義人になる人の住民票の写し(戸籍の附票でも可)
  4. 遺産分割協議書(遺産分割をする場合)
  5. 印鑑証明書(遺産分割協議書に押されるご実印のもの)
  6. 不動産の評価額を証明する書面
  7. 登記申請書

ざっとこんな形になります。それでは1.から順に具体的に検討しましょう。

1.相続関係を証明する戸籍、除籍、改正原戸籍

原則的な書類としては次のとおりです。

  • 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍、除籍、改正原戸籍謄本
  • 相続人の現在戸籍謄本
  • 被代襲者の出生から死亡までの戸籍、除籍、改正原戸籍謄本(代襲相続がある場合に限る)

現実的には誰が相続人かを確認しながらの収集になるので無駄のない効率的な手順で行う必要があります。

順序で言えばまず最初に「亡くなった方の出生から死亡までの戸籍、除籍、改正原戸籍謄本」を取得します。市区町村の役所に行って「この人の生まれてから亡くなるまでのものをください。」と言えばだいたいの職員は対応してくれます。途中で他市町村へ転籍されていたりすれば、その市町村にも不足分を請求することになります。ずっと同じ市町村に在籍されている方でしたら楽に終わります。

次に、取得した戸籍、除籍、改正原戸籍の内容を見て親族関係を探ります。法定相続人が誰なのか確定させましょう。

[第一順位:子]

まず、被相続人(亡くなった親族)に子供がいた場合はその子供が相続人となります。その子供が亡くなった親より先に亡くなっていた場合は更にその子供、孫にあたる人が相続人となります。これを「代襲相続」と言います。更にその子供が亡くなっていた場合にはひ孫が相続人(再代襲相続人)ということもあります。なお、養子も相続権のある子供になります。

[第二順位:直系尊属]

第一順位である子供がいない、または代襲相続人含め子孫が全員被相続人より先に亡くなっている場合は無くなった方の直系尊属が相続人となります。直系尊属とはご両親、更に祖父母、曾祖父母と「ご先祖様にさかのぼって存在する親族」となります。まずはご両親が相続人となり、ご両親が被相続人(つまりご両親の子供)より先に既に亡くなっていた場合は祖父母に相続権が移ります。なお、養父母も相続権のある直系尊属となりますが、配偶者側のいわゆる「義父母」には相続権がありません。

[第三順位:兄弟姉妹]

第一順位の親族も第二順位の親族もいない、または全員被相続人より先に亡くなっていたとすると兄弟姉妹が相続人となります。この兄弟姉妹の誰かが被相続人より先に亡くなっていた場合でも、子と同様に代襲相続として兄弟姉妹の子が相続人となります。なお、子とは異なり代襲相続は一代までとなっており、再代襲は認められません。注意したいのは異母兄弟姉妹や異父兄弟姉妹、養子による兄弟姉妹も兄弟として相続権があることです。

[相続人なし]

第一順位から第三順位までの親族が誰もいない、そして配偶者もいないとすると法定相続人がいないことになります。この場合の手続については割愛しますが、専門家にご相談されることをおすすめいたします。

[配偶者がいる場合]

被相続人の配偶者は民法の規定にあるように、常に相続人となります。配偶者がいる場合は以下のとおりの法定相続分となります。

  • 子による相続       子供1/2  配偶者1/2
  • 直系尊属による相続  直系尊属1/3  配偶者2/3
  • 兄弟姉妹による相続  兄弟姉妹1/4  配偶者3/4

子、直系尊属、兄弟姉妹が複数に及ぶ場合は割合はそれぞれの相続分を等分に分けます。兄弟姉妹の相続においては父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする規定が民法にあるので注意しましょう。

こうして法定相続人が誰かを確定させ、その法定相続人の現在戸籍を取り寄せることとなります。死亡している相続人についても死亡の証明のために戸籍が必要となります。代襲相続される「被代襲者」となりうる方のものについては出生から死亡までのものが必要となりますが、これは代襲相続人がいるのか、いるのなら誰なのかと言うことを確定させるためです。

ここまでの記載で相続登記を自分でやる場合は時間がかかるということがおわかりいただけたかと思います。それに加え自分の兄弟姉妹の戸籍は委任状をもらわないと取得できないことから、行方がわからない方がいた場合の書類収集は困難です。司法書士に依頼される場合は職権で戸籍を取得できるので、そういった場合でも対応が可能です。ご自分で相続登記を行うかどうかについては、進めながら随時検討されると良いでしょう。