医療法人の役員変更という少しレアな案件について書きます。

同業者のお役に立てればと思います。

医療法人の登記事項

医療法人の登記事項です。

  1. 目的及び業務
  2. 名称
  3. 事務所の所在場所
  4. 代表権を有する者の氏名、住所及び資格
  5. 存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由
  6. 資産の総額(別表)

以上の通りです (組合等登記令第2条第2項) 。

4.をご覧になればわかる通り、登記される役員は理事長のみです。

6.も特徴的です。毎事業年度末ごとに登記する必要があるので、役員の更新とセットになりがちです。
なお、登記懈怠に至る期間は「毎事業年度末日から三月以内」となります( 組合等登記令第3条第3項)。
以下、記載例として役員の更新に加えて資産の総額の登記も盛り込みます。

申請書記載事項(抜粋)

登記の事由

  • 理事長の変更
  • 資産の総額の変更

登記すべき事項

「役員に関する事項」
「資格」理事長
「住所」名古屋市天白区○△町■✕番地
「氏名」登記太郎
「原因年月日」年月日重任
「資産の総額」金1000万6000円
「原因年月日」年月日変更

添付書類

  • 社員総会議事録
  • 理事会議事録
  • 就任承諾書
  • 医師免許証の写しまたは認可書
  • 資産の総額を証する書面
  • 委任状

登録免許税

非課税

重要論点

役員の予選

役員の任期は、2年を超えることができない(医療法第46条の5第9項)。
そのため、2年を超える前に超えた時点から新しい任期が起算されるように選任する流れとなる。

ここで注意したいのは起算点である。就任が「日中」であれば、初日不算入の原則から翌日が任期起算日となる。これに対し、予選をして「指定された日より任期が始まる」ようにした場合は、その始まった日が任期起算日となる。
更新の際に、何年何月何日をもって「重任」なのか注意して判断したい。

資産の総額とは

ここで言う「資産の総額」は、貸借対照表上の「純資産」である。資産の部の総額でないことに注意したい。

社員総会議事録

「理事長は理事会で定められるから社員総会議事録の添付はいらないのでは?」というのは間違い。
理事会のメンバーを決するべく社員総会議事録の添付は必要となる。平理事は登記されていないので、理事会のメンバーが登記上明らかになっていない。

なお、理事会は法改正により法定機関にされたので、その理由においては定款添付を要しない。

医師免許証の写し,資産の総額を証する書面

該当書類に理事長が原本証明として押印する。
前述の通り、資産の総額とは「純資産」なので、純資産が記載されている書面を採用。

まとめ

医療法人は頻繁にある案件ではありません。

しかし、だからこそいざ依頼が来た時に慌てないで対処したいものです。