負債51億円余りで破産決定を受けたミネルヴァ法律事務所が一時期話題にあがっていました。黒幕は広告代理店だ、というネット上の意見がありますが「どういうこっちゃ?」と思った方に僕なりの視点で説明します。

30億円の不正流用の疑い

報道によれば依頼者に返却すべき預り金30億円の不正流用が疑われているとのことでした。

・・・普通は返しますよね。

まず「何に使ったんだろう?」という疑問があります。

果たして弁護士が選手生命を賭けて30億円で私腹を肥やすのでしょうか?

普通にやった方が安全に儲かるのでは?

何に使ったのか

以下yahooニュース(デイリー新潮)より引用

「私は事務所の会計が破綻しているのを把握していながら、依頼者のお金に手をつけ、身の丈以上の広告宣伝費を投入し続ける状態を看過してきました。その罪の重さは計り知れません。-中略- 負債額51億円は、おおまかに言って31億円ほどが預り金で、約20億円が広告宣伝費などの未払金です。ただこの31億円が広告代理店によって流用されていた。それを、私は止めることができませんでした。近年は過払い金返還請求訴訟の需要が減っているのに、広告費は減らさない。いずれ破綻する先細りのスキームでした」

ミネルヴァ法律事務所側のコメントになります。結局は広告費のために預り金を流用し、広告費自体の負債も残っているようです。

通常、広告費20億円の負債がそのままキープされるものでしょうか?

ここまで膨らむ前に請求、取り立てするのが普通の感覚ですよね?

広告代理店が単に優しいのでしょうか?

非弁提携

いったん本題から離れて「非弁提携」という士業以外にはあまり周知されていないモデルがあることに触れます。本当に怖い非弁提携として、第二東京弁護士会が資料をアップロードしているので、これを読んでもらうとわかります。

通常、弁護士や司法書士の士業には出資することができません。弁護士法人や司法書士法人に出資できるのはそれぞれ弁護士、司法書士だけです。株式会社のように誰でも株主になれる代物ではありません。弁護士法人に出資する人が誰でもいいとすると「弁護士業は弁護士法人が行い、株式会社ではできません」という規制が骨抜きになってしまうからです。

非弁提携は単純に言えばそういった規制をかいくぐるために弁護士事務所に名義だけを借りて私物化するモデルを言います。弁護士事務所と言う名で、裏では弁護士でない人が実質経営をするようなイメージです。

実際は外部からわかりにくくするために広告費だとか人材派遣費を名目に弁護士事務所からお金をもらいます。対価としては提携業者のコネクションや人材、設備、広告があります。

報酬に比例する形で広告費や人材派遣費を弁護士事務所から取ると非弁提携がバレやすいので、定額でお金をもらう形も多いと思われます。もちろん定額であれば本当に広告費であるという主張も通り易いとは思いますし、実際にシロなのかもしれません。しかし、定額という事実を利用して不当に高額な費用を請求しているケースもあると思われます。

本件ではどうなのでしょうか?

結局今回の広告代理店は非弁提携なの?

yahooニュース(デイリー新潮)より引用した代表の川島弁護士のコメントです。

「私は3代目の代表なのですが、ミネルヴァは設立時から児嶋会長と過払い金の仕事をしていたんです。17年に私が代表となる際には、会長から、2代目がもう高齢だから代表をやらないかと打診されたのです。そのときの言葉が、“経営は任せてくれ。4億円の負債があるけれど、資金繰りはこちら(LV)の担当者がいて、なんとか回っているから。ミネルヴァは潰せないんだ”でした。当時の私は、仕事の量を増やしていけば経営は立て直せるだろうと思ってしまったのです。代表就任前にちらっと決算書を見せられました。売り上げが立っていない過払い金返還請求訴訟などもあって、お恥ずかしい話ですが、経営状況を精査せずに引き受けてしまったのです。代表になってから分かったのですが、ミネルヴァは会長の支配下にありました。LVに支払うのは広告費だけでない。ミネルヴァの事務所はLVのグループ会社からの転貸しで、事務所の派遣社員もLVグループからの派遣。その人件費にはじまり、電話やインターネット回線の使用料などもLVグループに支払っていた。ミネルヴァはヒト、モノ、カネを握られ、会長の指示でLVへの支払いを、手を付けてはいけない預り金で充当していることが分かったのです」

川島弁護士から見るとミネルヴァ法律事務所は広告代理店会長の支配下にあったようですね。

僕は実際の帳簿等を見た訳でもなく、その場にいた訳でもありません。また、これは川島弁護士の言い分に過ぎず、本当に非弁提携なのかどうかはわかりません。

しかし、これらのコメントや20億に及ぶまで蓄積された広告費、会長が武富士の元支店長という報道はそれを連想するには十分な内容であるため、ネット上では非弁提携を疑う声があがっていました。

結局は事実がどうであれ、不正に依頼者からの預り金を流用していた事務所の行為は許されるものではありませんが・・・。

第一東京弁護士会からの申立て

報道によればこの破産はミネルヴァ法律事務所の自己破産ではなく第一東京弁護士会によるものだそうです。名目は弁護士会費の未納だそうです。

未納はわざとなのかと思われるくらい少額であろう名目です。

それに会費未納でいきなり破産の申立てをするのでしょうか?

催促や差し押さえもなく破産の申立てなのでしょうか。

加えてミネルヴァ法律事務所は総社員の同意により自ら解散しており、まさに畳む気満々な状態です。

ミネルヴァ法律事務所と第一東京弁護士会は事前に何か話があったのでしょうか。第一東京弁護士会がミネルヴァ法律事務所の実態調査のために敢えて公に破産の申立てをしたような見方もできます。

まとめ

結論から言ってこの件が本当に非弁提携なのかはわかりません。

僕ら司法書士の業界でも「非司提携」として似たような業態を疑われる事務所があります。同業者のうわさレベルで具体的に「そういう事務所」の名前があがったりしています。

今回の件の真実はともかく、改めて士業業界への問題提起として機能し、そして士業以外の方にも業界の膿のようなシステムがあることを認知して欲しいと思います。