「家を買った」という方、昨今ではマンションであることも少なくありません。
弊所に抵当権抹消のご相談やご依頼をされる方の多くはマンションに関するものです。

ところで、日本の一般的な土地建物については「土地」と「建物」の双方に個別で所有権があるという事実は多く知られていると思います。
では、いわゆる「分譲マンション」はどのような権利関係なのでしょうか。
多くの人、世帯が住まうマンションはどのような区分けで権利を持っているのか考えてみましょう。

共有という形態

まず、マンションに限らず所有権には「共有」という概念があります。
これは一つの物に対して所有者が複数いるケースになります。
この「共有」には「共有持分」というものがあり、例えば「2分の1」など、その割合が設定されます。
この「共有持分」である2分の1の権利のみを持っている人がその権利を売却することも可能です。
無論、全体の所有権を売却するには全員で行う必要がありますし、例えば不動産の共有持分のみを売ろうとしても一定のケースを除き需要が伴わないことがほとんどです。

分譲マンションの場合

専有部分

分譲マンションは各部屋に個別で「所有者」がいます。
例えば1階の101号室は田中さんの所有で5階の503号室は鈴木さんの所有で、となります。
これを「専有部分」と呼びます。

このように一棟の建物の一部範囲を所有する形態を「区分所有」と呼び、区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)の規定が及びます。
この区分所有される「専有部分」は、完全にその人の所有となります。
では不完全な部分があるのでしょうか。

共用部分

マンションにある長い廊下、エレベーター、エントランスなどは「共用部分」と呼びます。
このほか、マンションの管理規約で「共用部分」を増やすことが出来ます。
例えば、ある一つの「105号室」を集会室に設定したいのでこれを規約で「共用部分」とすることが可能です。
これを「規約共用部分」と呼びます。
規約は分譲当初はデベロッパー等が設定していますが、部屋が売れた後はマンションの管理組合によって設定、変更、抹消されます(例えば「ペット可」などの規約が設定されていたりします)。
これら共用部分は誰かの完全な所有権の対象ではなく、いわゆる「みんなのもの」として使います。
これを聞いて「あれ?さっきの共有と何が違うんだ?」と思われた方もいるかも知れませんが、「共有」と大きく異なるのは「共用部分は専有部分と切り離して譲渡(売却)できない」ということです。
つまり、共用部分にかかる権利はその専有部分と「一緒に売ってね」「一緒に譲渡してね」ということになります。
それもそのはず、例えば101号室を共用部分と切り離して売ってしまったら買った人は廊下もエレベーターも使えませんよね?
こういったケースを防ぐ役割が「共用」という概念にはあります。

敷地権

分譲マンションには「敷地権」という概念が存在します。
そのマンションの中でも「敷地権つき」と「敷地権なし」に分かれます。
「敷地権なし」は、建物の所有関係については当然先ほど述べた通りですが、土地は通常のものと同様「共有」してそれぞれの建物所有者が建物と一緒に「土地共有持分」を購入するケースが通常です。
こういったケースを含め、主として使用する不動産に附随する形で共同して使用する道路や水路の「共有持分」を購入する形態が、完全な所有権ではなく共有持分のみを購入する典型的な例です。

では「敷地権つき」とは何でしょうか。
その土地を使用する権利があるというところまでは同じですが、これは読んでそのままに建物に「敷地権がついた」状態なので、建物を売却したらその敷地権も一緒に売却される関係にあります。
つまり土地と建物を分離して売却できません。
これには例外があり、管理規約によって分離処分を可能にすることができますが、通常はそのような形態にはしません。
敷地権には割合が設定されており、よく「所有権〇〇万〇〇〇〇分の〇〇〇〇」のような形で登記されます。その割合は往々にして専有部分の床面積の割合で各戸に設定されていることが多いです。
なお、敷地権は土地の所有権に限らず「賃借権(お金を払って借りている状態)」にも設定できるので、所有権に限りません。

敷地権には建物の建っている「法定敷地」と別途規約で定める「規約敷地」があります。
規約敷地においても区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めるものとされ、「みんなのもの」として利用します。

古いマンションの場合

マンションが古い場合はしばしば敷地権の設定がされていないことが多いです。
その場合は建物は上記のとおり区分所有として存在しますが、土地は通常の「共有」として各戸の所有者が持分を共有します。
そういった土地の登記事項(全部)証明書を取得した場合、その所有者が多数のため権利部分の記載が膨大になり、分厚い証明書が発行されることもあります。
証明したい記載事項のみを限定して証明書発行することもしばしばあります。

一棟の賃貸マンションの場合

これは一棟まるまる誰かの所有であって、それは通常の一般建物と何ら変わりありません。
その一部を契約によって賃貸しているだけなので、何も特別なことはありません。
区分所有の登記を行うのは販売のためなど、各戸に個別の「所有者」を想定したい場合なので、一棟の一部を賃貸する時にはそのような方法は使わないのが一般的です。