前回は大阪の地面師の手口を中心に記事を作成しました。
今回は有名な積水ハウス地面師詐欺事件のケースをベースに書きます。

大阪との違い

大阪との違いは端的に言えば「法人」と「個人」の違いです。
大阪のケースは法人である会社が所有者を装っており、いかに他人である容疑者が代表取締役であるかを偽装できるかがポイントとなっていました。

本件はれっきとした個人ですので、代表権の話ではなく「その人が果たして登記に記載されている本人なのか」というシンプルな点に集約されます。

個人の本人性の確認方法

以前の記事でも記載しましたが、不動産登記の名義人は住所と氏名が記載されます。
まずはこれが一致する者であるかがポイントとなります。

次に、不動産登記の名義人には原則として「登記済証」や「登記識別情報」が発行、交付されます。
これはいわゆる「権利書」であり、本人性の担保となる大きな要素です。

住所と氏名の同一性

基本的に以下の書面を確認します。

  • 印鑑証明書
  • 身分証明書(免許証、マイナンバーカードなど)

住所は転居されている場合があるので、その場合は住民票の写しで履歴を確認します。

地面師が相手の場合はこれらの書類が偽造である、という想定があります。
したがって、これらの書類をしっかり確認することが我々には求められます。
しかしここで一点留意いただきたいのが、

  • 偽造された印鑑証明書
  • 偽って発行された印鑑証明書

この2つのパターンが考えられるということです。
前者は相続に難くない、そのままの意味で「本物ソックリに作られた印鑑証明書」です。
後者は、「印鑑証明書は役所が発行したまともなものであるが、その発行に至る登録が虚偽であった」というケースです。
大阪でもそうでしたが、「こんなのどうやってやるんだ?」という事件は我々の想像を超えてくる可能性があり、プロの詐欺集団は当然に後者の可能性もあると考えます。
こうなるともはや印鑑証明書による判断が難しいです。

運転免許証が精巧に作られた偽造品であり、印鑑証明書が正規の役所が発行した者であるケース、こんな恐ろしいことはありません。

いわゆる権利書の有無

住所氏名のほか、登記済証や登記識別情報、いわゆる権利書を所持しているという事実は所有者の本人性として大きな担保となります。
しかしながらこれらも偽造の対象とならない保証は無いので注意しなくてはなりません。

余談ですが、相続登記において登記上の住所と本人の住民票の住所が異なり、過去の記録も廃棄され、亡くなった方と登記の名義人の同一性が証明できないケースがあります。
こういった場合に権利書を添付することによって同一性を証明する、という場面があったりします。

地面師たち見ましたか?

と聞かれます。

取引の立会の場で印鑑証明書の印影を確認するために印鑑証明書と押印書類を重ねて確認したりするのですが、その際に時々「地面師たちのやつですね!」みたいに言われます。

いや、

その、

私は

地面師たちを

見てません!

終わり