
近年は借金の整理の広告がテレビやラジオ、インターネットで行われているのをよく見ます。
借金が払えない、では実際なにをどうやって解決しているのか?
みなさまはご存知でしょうか。
債務整理とは
通常は次の4つを言います。
- 任意整理
- 特定調停
- 自己破産
- 個人再生
順番に解説します。
任意整理と特定調停
任意整理は借金の減額交渉を直接相手側、すなわちサラ金業者やクレジット会社などに行う手続です。
これにより利息カットや無理のない分割返済を目指します。
交渉なので当然ですが、債務者の希望との折り合いがつかない場合もあります。
しかしながらいたずらに放置して利息を増大させることを考えると、例え思うような条件でなくとも、しっかりした返済計画に基づいて交渉を行う価値はあります。
譲歩してくれる訳がないと思いがちですが、相手にとっては破産される方が損なので交渉の余地はあります。
一方、特定調停はあくまで相手側の同意ありきという点は変わりないのですが、間に裁判所が入る形となります。
裁判所の調停委員主導で手続が行われるので、例え専門家に依頼せず自身で行ったとしても交渉のストレスは自力の直接交渉に比べ少ないものと思われます。
結果、調停調書が作られ、それが「債務名義」として効力があるので、支払いが滞った場合には訴訟を経ずに速やかに差押え等がされるリスクがあります。
形式的には違いはあるものの、この2種で得られる効果は類似しています。
自己破産
一般的には借金をチャラにするという漠然とした理解がされていると思います。
借金そのものが消滅するかどうかは疑義がありますが、支払いの責任が無くなるのは事実なので、おおよそイメージ通りの理解で差し支えないと思います。
そしてこれが最大のメリットになります。
手続は原則として財産の清算を行い、各債権者、すわなち業者に支払いを行います。
一定額未満の財産であれば「同時廃止」と言って、破産管財人による財産の清算を行わずに免責を得る方法を採用する余地があります。
破産管財人がつくだけで40~50万円程度の予納金の負担を想定しなくてはならず、可能な限りこの「同時廃止」を狙う形となります。
デメリットとしては、一定期間の間は弁護士や警備員など一定の職業に就けなくなることや、清算による財産喪失となります。
また、一般的にいわゆる「ブラックリスト」に載ることがデメリットのように思われがちですが、そういった事故情報が掲載されるのは破産に限らず任意整理や個人再生も対象となるため、自己破産のみのデメリットとは言い難い部分ではあります。
個人再生
自己破産に比べて馴染みがなく、一般的にイメージしにくい手続です。
これは債務の一定額をカットして返済する手続となります。
メリットとして、任意整理よりもカットの期待幅が大きく、保有する財産の額にもよりますが、ケースによっては半分以上の減額も普通です。
自己破産のような職業制限も無く、財産の清算もありません。
そしてこれが最大の特徴と言っていいかもしれませんが、一定の要件を満たすと「住宅ローンを抱えたまま、所有する自宅を維持したまま手続が行える」ことにあります。
住宅ローンを抱えている方は、条件に当てはまるか必ず検討します。
しかしながらあくまで返済が前提なので自己破産のような「免責」も無く、破産管財人ならぬ「再生委員」が選ばれた場合は、15~30万円程度の予納金を想定しなくてはなりません。
CMの過払い金返還請求とは
関連する話題ですが、過払い金返還請求についてご説明いたします。
一定割合以上の利息は利息制限法によって禁じられています。
この過払い分の利息はいわゆる「不当利得」として返還請求できます。
多重債務の方にとってのこれは「財産」なので、自己破産の場合は保有財産にカウントされます。
任意整理の方はそのまま返済に充てることで負債を軽減、または余った場合はその分を預貯金に回すことができます。
これは各種債務整理のさなかに検討するものであって債務整理の一種というくくりはしていません。
【なぜ過払い金請求が多かった?】
きっかけは2006年の最高裁判決でした。
利息制限法オーバーかつ出資法による規制内の利率、いわゆる「グレーゾーン金利」についての返済について無効とし、つまり無効分は返還請求できることとなりました。
それにより、高利率で利息を支払ってきた債務者は勝訴し放題の環境になり、弁護士や司法書士にとって依頼が殺到、バブル状態になりました(弊所は令和1年開業なのでそのようなバブルは味わっておりません)。
知識のある方はよく「過払い金はもう時効なんじゃないの?」と疑問を呈されます。
これは継続的な一連の取引と解された場合はその最後の取引から時効が起算される、というのを利用して請求しており、全盛期に比べれば少ないですが、広告もされているようにまだ存在するのが実情です。